公開日:2015/10/24
作成者:*あき*
先日、草加駅前のアコスホールで行われた講演会に参加してきました。
今回私が参加したのは、全埼玉私立幼稚園連合会・全埼玉私立幼稚園PTA連合会が主催している「東南地区子育てフォーラム」というもので、埼玉県の東南地区(草加・三郷・八潮市)の私立幼稚園へ通う保護者・関係者の方へ向けた講演会でした。
私は娘の通う幼稚園のクラス役員をしており、そのお仕事の一環での参加でした。講演会というとなんとなく気難しそうで、ましてや子育て講演会だと自分の子育て観を否定されるような気がして怖い…という印象を持っていたのですが、この子育てフォーラムに参加してそのイメージは完全に覆されました。
得るものが大きく楽しいひとときだったことを忘れないように、また、参加されていない方にもその様子が少しでも伝わるようにレポートしたいと思います。
「はばたけ小さないのち」斉唱で会場がひとつに…
定刻になると開会の行事がはじまりました。
開会のことばの後に「はばたけ小さないのち」という子育て賛歌を会場全体で斉唱したことにまず驚かされました。客席にいる人はただの傍聴者ではなく、このフォーラムの参加者なんだな、と感じられ、それは講演会のお話の中でも強く感じられました。
この曲は、全埼玉私立幼稚園連合会が主催する行事では毎回歌われている曲のようです。とはいえ、参加している保護者のほとんどはこの曲を聞いたことがなかったのではないでしょうか…入場時に受け取ったパンフレットの中に掲載されていた歌詞を見ながら、主催者としていらしていた先生方や過去にも参加された方を中心に斉唱された歌に耳を傾けていました。
「ちいさないのちよ 幼な子よ
その幸せに 幸せかさね
あなたと生きる 美しい日々よ
花咲け 花咲け 夢薫る日々よ」
個人的には2番のこの部分の歌詞が好きです。全体的に子どもの成長を希望をもって見守る内容の歌詞ですが、子どもを育てる上で忘れがちな気持ちを思い出させてくれるような歌だと感じました。
そして主催者のあいさつや来賓の祝辞、市長さんからのお祝いのメッセージが紹介され、講演会の講師の紹介ののちに講演会が始まりました。
「親はにこにこ、子どもはいきいき」で気楽な子育て♪
はじめに登壇されたのは、日本心理カウンセリングセンターの所長で臨床心理士の関輝夫先生です。「子育てが気楽になるお話」という母親にとって興味深い題材で、個人的には一番楽しみにしていたところでした。
中央に置かれたスピーチ台は使わず、壇上を歩きながらマイクを手に持って、まるで漫談のような語り口調でお話が始まりました。
開口一番、「この後に素晴らしい先生のお話が控えてますから、私の話はあんまり聞かなくていいですよ、子どもの相手をする時のように適当にふんふんと聞いてください」と笑いを誘います。
・つい子どもにガミガミ言ってしまうことは親の愛情深さの表れ、子どもを思ってこそ!
・子どもが一番望んでいるのは「お母さんはあなたが大好き!」の言葉
・お母さんはもっと自分を褒めましょう!これでいい、と認めることで自分を好きになる
・子どもの話はいつでも「ああ、そうなんだ!」と一度受け止める
⇒”間”ができることで親は気持ちにゆとりができ、子は親が受け止めてくれると感じられて落ち着く
・空を見て(副交感神経が作用)、ニコッと笑って、深呼吸(吐く→叶う)
⇒”間ができないと魔が入る”
・子どもの攻撃は”おびえと甘え”、文句も無言も自己主張・意思表示
⇒一番愛している・信頼している人だからこそ強く主張する、そうじゃない相手にはしない
・「ちゃんと」はプレッシャー。「しっかり」、「早く」と言っても子どもにはできない。できたことややったことを認めて褒めるのは子どもにとっての喜び
・45cmは親密な距離、120cmはグループの距離、360cmは公的な距離。近いほど心が通う…だから赤ん坊はママの抱っこが大好き!
・腰に手を当てて上から(上から)言う、同じ目線で(対等に)言う、肩を抱いて下から(認めて)言う←快感情が湧く
⇒どんなに正しいことも言い方が大事、受け止める側の感じ方で伝わり方が違う
・固定観念(思い込み)で決めつけるのは一人相撲、すべては自分の中にある。自身を変えるのではなく表現を変えてみる
・「あんたが悪いのよ」と相手を指さした手は、3本が自分を向いている。自分のイライラ・不完全感を相手に向けてるだけ
・愛情が足りないと人に分けてあげられない
⇒自分を愛して褒める、子育てを楽しんで今が幸せだと思うことで自分を認める
・子育ての問題は人生においての恵み。他人との比較は意味がない、成功は手柄・失敗は宝、反抗は成長。苦労が逞しさを作る
・子どもが親を成長させる…子どもに感謝!
文字にすると堅苦しく感じるかもしれませんが、これらの内容を、配られた講演メモをもとに(…少し脱線もしながら)、終始笑いの絶えない軽妙なトークでお話ししてくださいました。私も気づけばたくさんメモを走らせていました。
相手との距離感や伝わる言い方のお話の中で、客席にいる全員を立たせて、隣の席の方たちと数人のグループを作らせて姿勢やセリフを指定し、言われたら嫌な言い方やされると嬉しいコミュニケーションの取り方を実践させる時間があったのですが、「子どもにこんな(感じの悪い)言い方しちゃうなぁ」、「目線を下げると気持ちが伝わりやすい気がする」、「親子じゃなくても距離感とか言い方って大事だよね」…などと、実感のこもった声が聞こえてきていました。
そして楽しいだけでなく、自分の子育てを振り返って感じるところが多かったようで、お話のところどころで涙を拭う姿も見られました。
講演会終了後に先生の著書「「しぐさ」でわかる相手の心理」の販売もあったのですが、私も友人も購入しサインもしていだたきました。
この講演会の中で話されたことも掲載されていて、イラストの多い読みやすい本で読みやすかったです。
「幼児期の体験の大切さ」とアコーディオン生演奏でミニコンサート♪
続いて登壇されたのは、全埼玉私立連合会の名誉会長である平原隆秀先生です。関先生同様、壇上を歩いてマイクを手に持ってのお話でした。
子育てフォーラムでは毎回素晴らしいお話をされるという前評判を聞いてはいたのですが、穏やかな口調や言葉を大切にお話しされる様子に感心しきりでした。
「幼児体験の大切さ」という題材から、これまでの我が子の育て方を振り返って反省することも多いだろうな…と思っていたのですが、そういう反省も含めた親の気持ちや行動をすべて肯定してくださる内容で、その穏やかな話しぶりにほっとして子どもに返ったような気持ちで聞いていました。
・子どもたちは良くも悪くも親の影響を強く受けて育ち、幼少期の環境から学んだことが生涯続いていく
・親から子へ話をするばかりでなく、子どもの話をしっかり聞く
⇒一方通行でなく双方向でバランスよく、親子でもいつもお互いさまの気持ちで
・毎日欠点ばかり指摘すると「自分はダメな子」だと思ってしまう
・褒められることはいくつになっても嬉しい→ママだってパパだって嬉しい!だから旦那様にも(奥様にも)ねぎらいの言葉をかけるのは大事
そんなお話が続いていたのですが、途中で突然「スペシャルゲストをお招きしているので、ぜひ生演奏を聞いてください」とミュージシャンがステージ上に招かれました。
パンツスーツで颯爽と登場したアコーディオン奏者のMiyack(ミヤック)さんは、子育てママとしても大先輩。平原先生のお話をはさみながら、時にはお歌の大好きな平原先生が自ら歌いながら(笑)全部で7曲ほどを演奏してくださいました。
途中でご自身のお子さんの幼少期の子育てのことや、子どもが親の手を離れてから感じることなどもお話ししてくださったのですが、その姿は同じ”母親”とは思えないぐらいとても輝いて見えて、「時間が経ったら自分もあんな風に今頃のことを懐かしく思い出してアドバイスできるようになるのかな…」と、希望的な思いを抱きながら聞いていました。
平原先生は、”子育て中の親御さんは普段なかなか見ることができないこういった生のパフォーマンスを、せっかくこんなに広い会場にいるのだからここにきている短い時間だけでも体験して帰ってもらいたい”とのお考えから、これまでも多くのスペシャルゲストを招いているそう。
「出産してからずっと、自分の時間ややりたいことをたくさん削って子どものことを第一に優先してきたママたちへのご褒美ですよ」という言葉にジーンとしてしまいました。
ママたちに花束を…♪
講演会が終わり、保護者の代表者から講演してくださった先生方とMiyackさんへの花束が贈呈されました。
すると花束を受け取られた先生方が、その花束を会場にいるママへプレゼントするという一幕がありました。 平原先生が突然「今からある日にちを言うので、その日が誕生日の人に渡したい」とおっしゃられたのです。その日にちを言うとすぐに一人のママ(の抱いている赤ちゃん)の手が挙がり、壇上に招いて花束を手渡しされたのでした。 「この赤ちゃんがあなたにプレゼントしてくれたんですよ」との一言が…最後の最後まで平原先生の優しさを感じました。
関先生も縁のある日時を挙げていったのですが、なかなかその日が誕生日の人がいなかったようで、最後に「じゃあ欲しい人!」と言ったところたくさんの手が挙がり、一番早くに手を挙げたママにプレゼントされました。
花束を受け取られたお二方だけでなく、会場にいたみんなが先生方の優しさを最後まで感じながら、子育てフォーラムの幕が下りたのでした。
保護者の心を軽くする時間
この子育てフォーラムは20年以上の歴史があり、毎年県内の各地域(20を超える会場)で開催されています。
この日アコスホールに集まった400名ほどの参加者の皆さんも、メモを取りながら熱心に耳を傾けていたり、面白いお話に声を出して笑ったり、親の苦悩への共感や励ましの言葉に涙したり、子育て経験者でもあるプロのアーティストさんの生演奏が聴けたり…日常とは違った空間を満喫できたのではないかと思います。
昨年の子育てフォーラム各会場への来場者数は8600人にのぼったそうで、長い年月の中で、それぞれの時代に幼児期の子育てに悩むたくさんの保護者の心を軽くしてきたんだろうなぁと感じました。
関先生が時間をかけてお話ししてくださった距離感や目線を合わせた声掛けの仕方をはじめ、ポジティブな考え方・受け止め方などはどれも納得できるものばかりで、子どもへの接し方についてのすぐに実践できそうな具体的なアドバイスも大変参考になりました。
また、平原先生が最後の最後におっしゃられた、「いつどんなことが起こるかは誰にも分らないけれど、突然の幸運はいつも子どもを最優先にしてきたことへのご褒美ですよ」というお言葉があたたかくて胸に沁みて、とても印象的でした。
母親の先輩でもあるMiyackさんのアコーディオンの音色とカッコイイ佇まいは本当に素敵で、またどこかで聴けたらいいなぁと思いました。
個人的な感想を並べただけのレポートではありますが、良い時間だったことが少しでもお伝えできていれば幸いです。
興味を持たれた方は、開催概要を全幼連発行の子育てジャーナルでご確認いただくか事務局へお問い合わせいただき、これから開催の他地域の会場や次年度の子育てフォーラムにぜひご参加くださいね!
◆ 関連サイト ◆
全埼玉私立幼稚園連合会※子育てフォーラムページに掲載されているのは26年度(昨年)の日程ですのでご注意ください
関 輝夫 心理カウンセリング
Miyack 魅惑のアコーディオン
取材日:2015/9/16
作成者:*あき*